2 食生活改善推進員の健康づくり活動の促進
地域における食育の推進に当たっては、地域の健康課題、食習慣、食文化等を理解し、地域に密着した活動を幅広く推進していくことが重要です。一般財団法人日本食生活協会は、その傘下の全国食生活改善推進員協議会と行政との連携を図りつつ、「私達の健康は、私達の手で～のばそう健康寿命つなごう郷土の食～」をスローガンに、生活習慣病予防対策に重点を置き、時代に即した健康づくりのための食育活動を進めています。令和2（2020）年4月現在、全国46道府県の1,301市町村に協議会組織が存在し、ボランティア団体として住民のニーズにあった健康づくり事業を推進しています。食生活改善推進員は、市町村が行う食生活改善推進員の養成事業の修了後、自らの意思により当該協議会の会員となることで活動が始まります。地域における食育推進活動の最大の担い手となっており、令和元（2019）年度は1年間で延べ約1,350万人に対して健康づくり活動を実施しました。なお、令和2（2020）年度は、新型コロナウイルス感染症対策をした上で実施しました。
主な活動には、次のようなものがあります。
（1）世代別に取り組む生活習慣病予防のための減塩推進スキルアップ事業（第3弾）
「健康日本21（第二次）」では、社会参加の機会の増加による社会環境の質の向上を図り、健康寿命の延伸、健康格差の縮小を目指しています。
令和2（2020）年度は令和元（2019）年度に引き続き、「健康日本21（第二次）」の目標を踏まえ、世代別のニーズに合わせた食生活改善の推進と社会環境の整備に取り組みました。対象を「若者世代」、「働き世代」、「高齢世代」の大きく3つに分け、少人数の講習会や訪問活動を行いました。若者世代には、朝食欠食の解消と食事バランスの必要性をテーマに、バランスのとれた食事を習慣化することが健康的な身体を作り食事の楽しさにつながること、働き世代には、生活習慣病予防として「適正体重の維持」や「減塩」（食塩摂取量8g未満）、「野菜350g以上摂取」の大切さを伝え、食生活の見直し及び体重測定や血圧測定の習慣化の推進を図りました。また、高齢世代には、低栄養予防や閉じこもりによる孤立化を防ぐために、第1の居場所である「家庭」、第2の居場所の「職場」に次ぐ、第3の居場所「シニアカフェ」をオープンさせ、小さなコミュニティ単位でのお茶会等を通して閉じこもり予防を進めました。低栄養・フレイル予防の取組としては、食事のポイントや方言の入ったラジオ体操等で身体を動かす内容にしました。
講習会テキスト
高校への出前授業
「シニアカフェ」
（2）「おやこの食育教室」で「食育5つの力」
「おやこの食育教室」
「食育ランチョンマット」
「おやこの食育教室」は、体験学習を通して「食育5つの力」である<1>食べ物を選ぶ力、<2>料理ができる力、<3>食べ物の味がわかる力、<4>食べ物のいのちを感じる力、<5>元気なからだがわかる力を理解することを目的としています。令和2（2020）年度は「朝食と共食の大切さ」をテーマに、「食物アレルギー」と「食品ロス」についても情報を発信し、親子での調理体験から成長著しい大事な時期における食事の大切さを共に学び、親子のコミュニケーションの充実を図りました。また、一般財団法人日本食生活協会が作成した「食育ランチョンマット」を教材として、食の基本である主食・主菜・副菜の正しい並べ方を学びました。本教室は、いろいろな体験を通して様々な能力を見いだす絶好の機会でもあり、親子で共食の大切さを感じ取ってもらうことにもつながりました。
（3）生涯骨太クッキング
「生涯骨太クッキング」
「シニアランチョンマット」
健康寿命の延伸と生活習慣病の予防を目的として、料理講習会「生涯骨太クッキング」を実施し、あわせて、令和2（2020）年度は、「高血圧予防」、「糖尿病予防」をテーマに減塩と適正体重の維持について学習し、フレイルから要支援や要介護の状態になりやすくなることから、低栄養予防と骨折・転倒予防のためのロコモーショントレーニングや手軽にできる体操にも取り組み、健康維持及び増進に努めました。また、一般財団法人日本食生活協会が作成した「シニアランチョンマット」を教材として活用し、低栄養予防のためにエネルギーとたんぱく質をしっかりとることの大切さを伝えました。
（4）男性のための料理教室
男性のための料理教室
高齢者の単身世帯が増加する中、男性を対象に、食生活の自立や生活習慣病を防ぐことを目的とした少人数の料理教室や訪問活動を実施しました。「男性料理教室20のレシピ」を教材に、ごはんの炊き方から始め、「生きていくための20品目」を覚えてもらいました。この男性料理教室の参加者からは、「人と人とのつながりが地域参加へのきっかけにもなっている」との声が寄せられています。
（5）やさしい在宅介護食教室
「やさしい在宅介護食教室」
「やさしい在宅介護食」
「シニアカフェドリル」
高齢になると加齢に伴い食欲が低下し、料理を作る意欲も減退していくため、知らぬ間に低栄養状態になる高齢者が増加しています。今後も高齢化は続き、家庭での食事介護の知識を習得することが求められてくることから、令和2（2020）年度は自分でも作ることができる介護食を知り、その作り方を学ぶことを目的に、「やさしい在宅介護食教室」を実施しました。
また、単身の高齢者への食事支援や安否確認の一つとして、「おとなりさん、お向かいさん活動」の「一皿・一声運動」を実施しました。
（6）「毎月19日は食育の日」全国一斉キャンペーン活動
全国食生活改善推進員協議会では、国が毎月19日を「食育の日」と設定したことに賛同し、平成18（2006）年度から「毎月19日は食育の日。家族そろって食事を楽しみましょう」をテーマに全国各地において訪問活動等を実施しています。「食育の日」のチラシを配布し、食育の大切さや食育の認知度を高めるための活動を行っています。
「毎月19日は食育の日」
全国一斉キャンペーン活動<1>
「毎月19日は食育の日」
全国一斉キャンペーン活動<2>
事例：「放射線と食の安全」についての車座（くるまざ）意見交換会
（第4回食育活動表彰農林水産大臣賞受賞）
楢葉町（ならはまち）食生活改善推進員会（福島県）
車座（くるまざ）意見交換会の様子
オリジナルメニューで放射性物質と食品の安全について学ぶ様子
楢葉町（ならはまち）食生活改善推進員会は、昭和62（1987）年に設立され、料理教室の開催や、町のイベントや乳幼児健診などでの食事提供等、地域に根ざした食育の推進活動を行ってきました。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故による避難指示に伴い、一時休会しましたが、平成26（2014）年から活動を再開しました。再開後、地域住民を対象とした料理教室を実施する中で、住民が食品中の放射性物質に不安を抱いていることを知り、知識の普及と不安の軽減を目的に、「放射線と食の安全」についての車座（くるまざ）意見交換会を開始しました。
車座（くるまざ）意見交換会は、地域のサロン等で実施しており、専門家による放射線と食品についての講話のほか、町立の食品放射線検査所で検査した自家栽培の野菜を使った食事を作り、参加者に提供しています。参加者に提供する食事に使用した野菜に含まれる放射性物質の検査結果も講話の中で説明し、参加者の放射性物質に対する理解を深められるよう工夫しています。町内で栽培した野菜は、たとえ放射性物質が検出されなかったとしても、子供や若者に食べさせない、又は食べさせたくないと考える住民がいまだ多く、放射性物質への誤解や風評が住民の間にもあります。そのような状況の改善に向けて、本活動は住民が放射性物質と食の安全に関する正しい知識を獲得する貴重な機会となっています。意見交換会で提供するメニューは、食生活改善推進員が開発した減塩すいとん等、住民が健全な食生活を送るためにも役立つものとなっています。
住民の放射性物質への不安はまだ続いているため、今後も車座（くるまざ）意見交換会を継続していくとともに、小学生向けの「子供クッキング」や「減塩・野菜が多めの食事」をテーマにした料理教室等を通して、住民の健全な食生活の実践につながる取組を行っていきたいと考えています。
事例：会員それぞれの活動が会員みんなの活動に～山形の魅力ある食文化を活かして「健康で豊かな食生活」の実現を目指す活動～
（第4回食育活動表彰農林水産大臣賞受賞）
やまがた食育ネットワーク（山形県）
情報発信のための
手作りポスター
在来作物を使った親子料理教室
やまがた食育ネットワークは、山形県内で食育を実践している又は実践しようとしている人等が集まり、食育活動の情報交換や会員相互の連携協力により、食育活動のより一層の推進を図ることを目的としています。東北農政局山形農政事務所（当時）が県内全域に食育のネットワークを構築するため、食育を実践している個人や団体を集めたのが始まりで、当初は関係者の情報交換が主な活動でした。その後、平成18（2006）年に独立しました。最大の特徴は、「ネットワークである」ということであり、最も重要なことは「情報の共有と発信」と考えています。県内を4つのブロックに分け役員を選出しており、会員同士がつながり、協力し合い、それぞれの活動や、ノウハウ・マンパワー等を生かし、多様な取組を経験しながら、学び合うことによって、更に広がりを生む活動になっています。
毎年、山形県で開催されている「やまがた健康フェア」に、やまがた食育ネットワークとして出展し（令和2（2020）年度は中止）、会員企業による食品展示や、生活習慣病予防や健康料理教室、在来作物や郷土料理の試食等を実施することにより、本ネットワークの活動を理解していただくとともに、広く県民に、食育を体験し、学んでもらえるよう、次世代につなげるための情報を発信しています。
また、在来作物を守り次ぐ人々を描いた山形発の長編ドキュメンタリー映画「よみがえりのレシピ」の制作支援や上映会の活動、地域の特産物を使った料理教室を通して、山形の在来作物の普及啓発も行っています。
少子高齢化や核家族化、共働き世帯の増加等に伴い、人々の食生活が変化する中、本ネットワークは、山形県全域の会員と様々な会員企業のネットワークを生かし、県民の健全な心身を育むための楽しい食育活動を行い「豊かな山形の食文化・魅力ある日本の食」を伝える活動を行っていきます。
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消費者行政・食育課
担当者：食育計画班
代表：03-3502-8111（内線4578）
ダイヤルイン：03-6744-2125
FAX番号：03-6744-1974
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